温度差

オーケストラの崩壊は「温度差」から始まるんですね。
想像できますか?
温度差にはいろいろな側面があります。
例えば音楽的な温度差。
ある人はなるべくいい音程で、いいアンサンブルでいい音楽をしたい。ある人は技術的な事はある程度目をつぶっても楽しく演奏したい。ある人はもっと時間をいっぱいとってパート練習などをやりたい。ある人はパート練習よりも合奏に時間を取ってもらいたい。
一般に楽器の上手下手で一番もめ事が起きやすいし、音楽的な姿勢の中で「上手」か「下手」かでの温度差が最もややこしいのです。
それは、上手と下手の境界線が限りなく不透明だからです。自分はあの人よりも上手なのに、いいパートが回って来ない。こういう事で不満がたまって行き、パートの中で温度差が生まれるんですね。
同様に、運営的な温度差。というのがあります。
ある人は自分の時間を削って一生懸命楽団のために働いているのに、他の人はそうは見えない。一緒に同じ係をやっているのに、同じだけ働いてくれない。しかし働かない人はさぼっているわけではなく、仕事や家庭的な事情でなかなか時間が割けない。
そんな事をなかなか話し合う機会もなく、段々溝が出来て温度差が生まれる。
やりたいのに出来ない人がいる。働きたいのに出来ない人がいる。
そういう事に配慮できずに、出来る事ややっている事だけを声高に叫んでいると温度差はどんどん大きくなります。
うちの楽団は技術に関しては追求しません。しかしそれは下手でいいというわけではなく、常に各楽員がそれぞれのレベルで常に上達を目指す、という事です。
人間は決して同一ではありません。社会の中では互いの違いを認識しないと、お互いを認め合う事が出来ません。
運営に関しても出来る人がやり、出来ない人がやらない。あとで文句を言うなら最初から引き受けなければいいんです。誰もやらなければ、楽団が崩壊するそれだけです。
温度差が起きないようにすることは、オーケストラに限らず、どんな組織でも、誰によっても不可能でしょう。
でも、私はその温度差を最小限にしたいんです。みんながそれぞれに気持ちよく、お互いの違いを認め合い、お互いを思いやりながらオーケストラを楽しく続けて行けるようにしたいんです。
簡単ではない事はよくわかっていますが、私はあきらめたくないんです。

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About NO Masaharu

元々トロンボーン吹きですが、棒振りです。好きな作曲家はベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ブルックナーです。 ビールと餃子とカレーが大好きです。