私は35歳の時に初めてオーケストラの指揮をしました。4年間で、5回ステージに指揮者として立ちましたが、正直にいえば、私はまだ指揮者にはなり切れていません。どっちかというと生きているメトロノームというのが最大限の誉め言葉でしょう(見る人が見ればそこにすら行っていないことは分かりますが)。
誰にもきちんと指揮を習っていないので、昨年東邦音大の公開講座で指揮法を2時間受講し、昨年末から今年の春まで池袋コミュニティカレッジで指揮法入門を24時間受講し、そして今度の東京芸大の公開講座でした。
先生は小林研一郎(以下本人が自分でいっていましたので、コバケンと略します)先生ということで、どれくらい高いレベルで教えてもらえるのか楽しみにしていました。
一般の人も来られる公開講座ということで、先生の方で想定していたよりもレベルに差があり、戸惑っておられました。
10時から16時迄という長い時間でしたが、まず、メモをとるなと指導されました。このことは実はこういう講座では非常に大切なことで、集中して人の話を聞くという訓練が大人になると出来ないので、要領よくメモをとってしまうのですが、実はとったメモはとった瞬間に忘れてしまうのです。
先生は国際的な指揮者であると同時に、東京芸大の教授でもあり、教育者であるという点は大変感心しました。なにしろ2拍子も3拍子も4拍子も振れないようなお年寄りがいるにもかかわらず(イライラはされていましたが)手を変え品を変え指導してくれました。
指揮法の講座というよりは、コバケンがどうやって音楽を指導していくのかを見せてもらった5時間でした。2台のピアノを前にベートーヴェンの7番2楽章や、チャイコフスキー5番、モーツアルトのアイネクライネナハトムジーク(コバケンずっと「アイネク」と言っていた…(号泣))なんかで勉強をしました。
以下、備忘録です。
・譜面を見ながら指揮は出来ない。覚えていなくてもいいから顔を上げて指揮をすること。
・自分はアウフタクトの意味を理解するのに34歳までかかった。必ずアウフタクトで呼吸をすること。生きている人間は必ず呼吸する。
・音楽をする時は常に考えること。聞かれたことに関しては必ず自分の意見を言うこと。
・指揮者は声が大きくなくてはいけない。
・拍子の図形なんか書けなくてもいい、音楽性を表すのが指揮者。
・しっかりと立つこと。
・振る前に「静止点」を必ず作ること。
・大きく振るとテンポが遅くなる。図形を小さくすればテンポが上がる。
因みに先生がショパンの前奏曲第7番を弾かれて「これ何部形式?」と聞かれた私は「分からないのですが、2部?」と山勘で答えて、見事外れ。「トロンボーンを吹いて指揮者だとかいっていて2部なんて答えてちゃダメだな」と怒られてしまいました(正解は1部形式だそうです)。
更に因みに芸大の食堂のカレーは310円でしたが、キャッシャーのおじさん(N響アワーでも見たことがありますが)に510円出すと、「これいらないよ」と10円返してもらいました(笑)。カレーは昔懐かしい味でしたが、ピリリと辛くて(私的には全然辛くないですが)美味しかったです。
帰りにキャッシャーのおじさんに「ごちそうさまでした」というと、「先生ありがとうね」といってくれました。誰にでも「先生」といっているようです(笑)。
明日も楽しみです。
About NO Masaharu
元々トロンボーン吹きですが、棒振りです。好きな作曲家はベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ブルックナーです。 ビールと餃子とカレーが大好きです。