小節線

うちのオケは初心者歓迎の割には上手な楽団だと思います。音程はまぁまぁいいし、演奏もまとまりがあります。でもここ2週間ずっと言い続けているのは、「フレーズ感」です。
以前このブログで「人間は知らないものは聞こえない」と書きましたが、付け加えます「人間は見た目に騙されます」。みなさんの演奏を邪魔しているのは、「小節線」です。これがないと、何拍子なのか分かりにくいですし、練習の時に著しく滞ります。
しかし私はここ2週間「小節線」が必要悪なのだと感じています。
みなさんは小節線の度に演奏を止めてリセットしてしまいます。
ちょっとお聞きしたいのですが、みなさんはカラオケで歌を歌う時に楽譜を見ますか?私は中学校の頃、明星の(そういうアイドル雑誌が昔あったんです)歌本を友人に借りて歌謡曲の写譜をしていたことがあります。
みなさん楽譜がないと楽器の演奏は出来ないのに、楽譜がなくても歌は歌えますよね。私もそうです。でも本当に音楽をやろうと思うなら楽譜抜きで歌を歌うなんて出来ませんよね?
そして多分楽譜を見たら楽器を持った時と同様に上手には歌えないはずです。
小節線に騙されるからです。
あの縦棒がくせ者なんです。区切っているように見えますから、演奏が止まってしまうんです。でも曲はそういう風には出来ていません。フレーズ毎に流さなくてはいけないんです。
「私は今日も元気で頑張ります」と一息でいうのか、
「私は、今日も元気で頑張ります」と私を強調するのか、
「私は、今日も、元気で頑張ります」と今日を強調するのか、
「私は今日も、げんきで、頑張ります」と元気を強調するのか、
「私は今日も元気で、頑張ります」と頑張るを強調するのか。
たった一つのセンテンスでも5通りの歌い方があるんです。音楽も同様です。
フレーズ感はすなわち「ブレス」です。どこでブレスするのか、少なくとも小節線の上で毎回ブレスをするのではあまりに非音楽的です。
私に指揮を教えてくれた橋本先生はカラヤンのアシスタントをしてコレペティトゥーアをしていたそうで、こんな話を聞かせてくれました。カラヤンは新人音楽家の発掘に熱心で、ある時新人の歌い手が来て、橋本先生がピアノを弾くと歌を歌う前にもう止めてしまうことがあったそうです。
「歌を歌う前のブレスがあまりに非音楽的だったので、そのあとに音楽が出てくるとは思えない」といって返してしまったそうです。
今度の練習からはフレーズ感やブレスについてしっかり指導していきます。指を回す練習よりは簡単だと思いますし、効果は絶大です。

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About NO Masaharu

元々トロンボーン吹きですが、棒振りです。好きな作曲家はベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ブルックナーです。 ビールと餃子とカレーが大好きです。