敬愛なるベートーヴェン

「敬愛なるベートーヴェン」を見てきました。原題はCopying Beethoven、ベートーヴェンの写譜士という意味だと思いますが、ベートーヴェンになりたかった人という深読みも出来るかと思います。
映画の出来としては私が評価する120分以内というポイントをしっかり押さえて(因みに私の定義では2時間以上の映画は「下品」です)、台詞も人物描写もよいなかなかの佳作だと思います。
ただ、私は今日ほど自分が楽譜を読めることに感謝したことはなかったです。実際は私は楽譜を読んでも音が鳴らないので楽譜が読めることにはならないのですが、楽譜を読む勉強をしたことにより、映画で見なくともベートーヴェンの人となりについては深く理解しているつもりです。
どの程度深くか?というのは他人との比較になるのであまり意味がないと思いますが、少なくとも一般の(楽譜が読めないという意味で)人よりはという点では間違いないと思っています。
何度も話しをしていますが、音楽家であるが故に、歴史上の人物であるが故に美化されがちですが、どんな歴史上の人物でも「人間」であることに替わりはありません。欠点もありますし、複雑さをもっているし、矛盾した正確や行動もいっぱいあるでしょうし、闇の部分や、コンプレックスもいっぱいあったでしょう。
この映画はとてもチャーミングにベートーヴェンを描写していますが、実際の彼はあんなもんではなかったでしょう。その苛烈さ、激しさは彼の楽譜によく現れています。
コリオランの最初!不気味な和音を念を押すように鳴らして、不気味な先行きを表しました。このような手法はバッハにもモーツアルトにもなかったでしょう。同様に交響曲7番の譜面も、彼の執拗な、細かいことにこだわる性格がよく現れているし、しっかり形式を守る彼の意志の強さや、4つの楽章で違ったリズムをモチーフにする技術を見せつける傲慢さも見て取れます。
映画なんか見なくても、私には以前やったシュトラウス、シューベルト、メンデルスゾーン、ショスタコーヴィッチの性格がある程度分かります(勿論数曲で全部分かるなどというつもりはありません)。その比較だけでも充分にドラマになると私は思っています。
因みに、モーツアルトは難しいです。楽譜を読んで何かが分かるというところまで私の読譜力が達していないのが残念です。
是非この映画を見て、また彼の楽譜と向き合って見てください。新しい発見があるかも知れませんよ。

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About NO Masaharu

元々トロンボーン吹きですが、棒振りです。好きな作曲家はベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ブルックナーです。 ビールと餃子とカレーが大好きです。

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