指揮者 家田厚志

私は楽員の演奏会にはあまり足を運ばないようしているんですが、今日は首席コンサートマスターの演奏会に行ってきました。
コリオラン序曲、メンデルスゾーンのヴァイオリンコンチェルト、ベートーヴェンの交響曲4番と言う私の好きな曲が3曲並んだせいもあるし、コンチェルトのソリストが松本蘭さんという超美人だから、というのもありますが、最大の理由は指揮が家田厚志先生だったからです。
私は専門の音楽教育を受けずに指揮者になってしまい、自分で色々本を読んだり、DVDを見て勉強したりしたいのですが、やはり壁にぶち当たり、2005年頃に自分の楽団を立ち上げる前に指揮を習いたいなぁと思っていました。
しかし、素人に指揮を教えてくれるところは殆ど見つからず、途方に暮れていました。「音大の公開講座とか探してみれば、確か芸大とか毎年やってるよ」と教えてくれた友人がいて、芸大のサイトを見に行ったのですが、その年の申し込みは終わっていました。
他の音大を探していたら、東邦音大がエクステンションセンターと言う社会人向けの公開講座で指揮法講座を開き、その講師が家田先生だったのです。
私は公開講座がどんなところか知らなかったので、申し込みには結構悩みました。音楽の素人がそんなところに行って、呆れられたり、バカにされたりしないだろうか?と。私はそれくらい日本のアカデミズムに対して偏見を持っていたんですね。
しかし、バカにされたり、仮に怒鳴られたりしても殺されるわけではないから、それはそれで指揮者としていい勉強になるだろうと思い、申し込みをしました。
東邦音大は当時の家から歩いて行けたんですが、行く前は緊張しました。指揮棒を持ってこいと書いてあったので、多分指揮をさせられるでしょう。音大生の前で指揮をするなんて恥をかかされるだけです。
ところがそんな緊張をあっという間に吹っ飛ばしくれたのが、家田先生の笑顔と軽妙なトークだったんですね。
私は指揮者というのは気難しい芸術家で、自分より不勉強な人を不機嫌に罵倒するものだと思っていましたから、その気さくな人柄にすっかり魅了されてしまいました。
さて、前プロのコリオラン序曲はうちのオケの第1回定演の前プロでした。隅々まで勉強した懐かしい曲です。家田先生の指揮はまるで力みがなく、それでいてしっかりフォルテがでる、4年前に見たあの時のまま、全然変わらない指揮でした。
変幻自在、天衣無縫、緩急自在、輪郭のはっきりした、楷書体の端正なベートーヴェンでした。しっかりと踏みしめるように曲を進めて行くのは、先生のユニークな人物像から見ると正攻法過ぎるように感じましたが、圧倒的にベートーヴェンでした。
オケはフォルテがしっかりしているのに比してピアノやピアニシモの音が大きかったこと。ダイナミクスの幅広いことがいいオーケストラの条件としている私としては少し残念でした。
中プロのメンデルスゾーンは、流石のソリストに対して、時にリードし、時にピッタリ付ける名人芸を見せてくれました。コンパクトなオーケストラが全力で指揮とソリストにつける様は小気味よくもありました。
メインの4番は私の好きなチャーミングな曲で、クライバーの名演が印象に残っています。家田先生はコリオラン同様、しっかりと踏みしめるようにこの曲を進めて行きました。
ちょっとテンポが私の好みより遅いな、とは感じましたが、終始一貫、徹頭徹尾ベートーヴェンとはこう振るんだ!と言う先生の強い意志を感じました。
終演後、満場の拍手の中、スコアをまとめて、お猪口を傾ける仕草をして「今日はおしまい、これから打ち上げに行きます、皆さんも飲みに行ってください」と満面の笑みとともにジェスチャーで観客にパフォーマンスするのも家田先生らしくて楽しかったです。
私は指揮者として、というよりも人間として家田先生の様な指揮者になりないと強く思った一日でした。

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About NO Masaharu

元々トロンボーン吹きですが、棒振りです。好きな作曲家はベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ブルックナーです。 ビールと餃子とカレーが大好きです。

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