チャイコフスキーの苦悩

今日のチャイコフスキーの5番の2楽章。出だしはなかなか重々しくてよかったんですが、段々、集中力が切れて来たのか、能天気な2楽章になってきました。
チャイコフスキーの交響曲はメロディーが分かりやすく、かつ美しいのでついつい表面的な演奏になりがちですが、それではチャイコフスキーではないのだと思うんです。
人生は辛く、醜く、憂鬱な事ばかりです。チャイコフスキーはため息をつきながら、その事についてウォッカを飲みながら愚痴り始めるわけですが、彼の紡ぎだす音楽があまりに美しすぎるために、その根底に流れるチャイコフスキーの苦悩部分を忘れて演奏すると、アホみたいに軽薄な音楽になっちゃうわけです。
人間は辛い現実に目を向けられない生き物なんです。
練習でも話しましたが、関東大震災はやってくるんです。でもその日が来るまで多くの人はその現実から目を背けて生きているんです。私を含めて多くの人間がそうなんです。
だからこそ、チャイコフスキーの音楽は愛されるんです。誰も辛い現実を思い知らされるような音楽なんか聞きたくはないんです。
うちの楽団は、ぜひチャイコフスキーの苦悩に一歩でも二歩でも迫ろうではありませんか。
この5番は勝利の行進でなんか終わらないんです。おわりなき苦悩に立ち向かう勇気だけなんです。
その事をぜひ頭の隅に置いて演奏してみてください。

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About NO Masaharu

元々トロンボーン吹きですが、棒振りです。好きな作曲家はベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ブルックナーです。 ビールと餃子とカレーが大好きです。

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