高名の木登り

指揮者のひともぢです。

私は徒然草が好きで、気が向いたときにパラパラと読んでいるんですが、兼好法師って、凄く意地悪で皮肉屋さんなんですよね。辛辣と言ってもいいかもしれません。

700年も前の人の言葉でもグサリと現代人に突き刺さるものが幾つも発見出来ます。

学校の教科書で習ったものに「高名の木登り」というのがありました。覚えていますか?

高名な木登りがいて、弟子があと少しで地面というときに「気をつけろ!」と声を掛けるものだから、「あんなに低くなってからではそんなに危なくないのでは?」と聞くと、「目も眩むほど高いときは本人も気をつけるが、地面が近づいて安心したときが危ないものだ」と語った話です。私の記憶の翻訳なので、細かくは違いますが、大まかにはあってるでしょう。

この人間の油断はオーケストラでも良くあります。

凄く上手な人が、練習で一回も失敗したことがないのに、本番で大事故を引き起こす。終わった打ち上げで、大号泣したり、大暴れしたり。

簡単な、本当に簡単な所でアンサンブルに綻びが出来て、空中分解したり。

安定感抜群の奏者が、プスリとやったら、その後全員こけたり。

枚挙にいとまがありません。

だから、私は高名の木登りよろしくこう言うんです。「練習で失敗した所は本番では失敗しないよ」と。

練習は失敗する為にやるんです。よく練習で失敗しないように慎重にやる人がいるんですが、私は全く逆のアプローチをして欲しいんです。

練習では思いっきりやって、自分の限界を試す。それを何回もやって、本番に臨む。

挑戦して失敗するのと、油断して失敗するのでは意味が全然違うと思うんです。

簡単な所や単純な所こそ油断せずに演奏したいものですね。

さて、そんなにハラハラドキドキの演奏会が9月7日近づいて来ました。杉並公会堂で13時半から入場無料なので、是非お越しくださいね。

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About NO Masaharu

元々トロンボーン吹きですが、棒振りです。好きな作曲家はベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ブルックナーです。 ビールと餃子とカレーが大好きです。