ステージ裏話

指揮者のひともぢです。

演奏会が終わり暫く経ちましたが、漸くお客様に書いていただいたアンケートを読み終えました。

アンケートは練習後に回覧して、全て目を通しています。暖かい言葉が多くて、本当にありがたいなと思いますし、厳しい言葉もいただきますが、それだってわざわざ書くにはエネルギーがいるわけで、もっとよくしたいと言うお客様の励ましの言葉と捉えて真摯に読んでいます。

特に私は指揮者ですから、直接いただいたお声を次の演奏会に最大限生かすことにしています。

アンケートには「すごく良かったです」と書いていただくことがあるのですが、演奏する側としては「あんなに事故だらけだったのに」と恐縮することが少なくありません。

音楽に詳しい友人に聞いてみると、成る程的確なコメントを貰えるのですが、音楽をやっていない方だと、演奏会効果でよく聞こえちゃうと言うこともあるようです。

実は演奏する側も、演奏会当日は魔法にかかったようなもので、何だか凄く良く出来たような気がしてしまい、大満足で演奏を終えるのですが、後で録音を聴いてあまりの不出来に油汗が出ることがよくあります。

私は指揮者ですから、冷静に全体を聴いているはずなのですが、演奏中に聞き漏らして、後で聴いて驚くということもあります。

飛び出してしまうと、これはお客さんでも分かってしまう訳ですが、「落ちる」と言って、演奏しなくてはいけないところで、音を出すのを忘れてしまうと、案外お客様には気づかれにくいようです。

演奏者も緊張はしているので、一小節間違うことがままありますし、一番多いのはシャープとフラットを落とすと言う初歩的な間違いを特に弦楽器はよくやります。

面白いことに、演奏中の間違いと言うのは「伝染」します。心理的なこういうのが研究されているのかどうか知りませんが、とにかく間違いは伝染します。

普段やらないような、ソロのミスなんかがあると、そのあとのプレイヤーが連鎖反応でガタガタと崩れたりします。

誰かがミスをすると指揮棒を大きく振って、楽団を落ち着かせようとしたりします。また、緊張しているプレイヤーは指揮棒を見る余裕がないので、そういう人に指示を出す時は、逆に指揮棒の動きを小さくしたりします。

プレイヤー同士がアイコンタクトを取ることも良くありますし、演奏中と言うのは驚くほど色んな情報交換をしているのです。

こう言うことはCDでは分かりませんし、編集されたテレビ番組でも中々分かりづらいものです。

特に我々のような下手くそな楽団ではステージ上はすましてお上品に演奏するとはいかず、どちらかと言うと、怒声飛び交う厨房のような雰囲気なのです。

寺山修司は「書を捨てよ、街に出よう」と書きましたが、皆さんも是非生のオーケストラを「観に」行くと大きな発見があるかもしれませんよ。

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画像は先日の演奏会ではありません。

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About NO Masaharu

元々トロンボーン吹きですが、棒振りです。好きな作曲家はベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ブルックナーです。 ビールと餃子とカレーが大好きです。