インプットとアウトプット

おはようございます。指揮者のひともぢです。

緊急事態宣言が明けて、なんとか毎週練習できていますが、おかげさまで、見学者も毎週来てくれています。今もコロナ状況下ではありますが、コロナが始まった頃はとにかく管楽器はほとんど来ていて、弦楽器が各パート1人か2人と言う状況が長く続きました。

合奏はできるんですが、オーケストラっぽくなくて、吹奏楽のような音に聞こえるんですね。ようやく最近オーケストラっぽくなってきて、昔が戻ってきた気がします。

さて、見学者が増える時期に、うちの楽団は毎回同じ問題に突き当たります。それは、見学に来られる方のレベルに激しくばらつきがある。と言うことです。

最初に断っておくと、うちの楽団は楽器のレベルは一切問いませんので、楽器さえ持っていれば、どなたでも大歓迎です。しかし、実際に来られる方が、楽譜を前に手も足も出なくて、目を白黒しているというのは、結構良くあるパターンなんです。

これは本当に千差万別、人によって捉え方が様々で、1音も弾けなくても、オーケストラの中で練習の雰囲気を味わうだけで幸せでした。と言ってくれる人もいれば、皆さんの邪魔になるので自分にはまだ早いようです。といって背中を丸めて帰られる方もいます。

そういう方にも「こっちは全然大丈夫ですよ」と声はかけるのですが、やっぱりご本人が楽しめないのですから、長続きはしません。そこは楽しめるのも楽しめないのも性格のことなので、いいも悪いもないと私は思います。

しかし、吉田兼好の徒然草の百五十段に、皆さんに紹介したい文章があります。

私は、この精神でやるのが良いと思います。そう思ってこの楽団を続けてきました。

ゴルフでも「練習場で1万発打ってから、コースに出るのが良い」とか、そういうある程度の基礎を身につけてからというような考え方はあると思いますし、それ自体を否定はしません。でも、音楽をやる人は特に、人に迷惑をかけたくないと言う建前を言って、本音は人前で恥をかきたくない、という人が多いような気がします(私自身もそうだからです)。

インプットをしっかりしてから、アウトプットというのは、慎重で、丁寧で一見合理的な感じがしますが、少なくとも大人になってから楽器を始めた人には当てはまりません。

大切なのはアウトプットです。アウトプットして、アウトプットしてスッカスカになれば、自然と自分でもインプットに気が行くようになります。これが逆にインプット過多で、アウトプットがほとんどない人がすごく多くて、だから上達のスピードが遅いのではないか?と私は思うのです。

例え話が適切かどうかわかりませんが、英会話スクールにだけ通って英語ができるようになった大人っているのでしょうか?私はいないか、いてもすごく稀なんだと思います。逆に、英語なんかできなくても、アメリカに引っ越して、英語社会で暮らせば、3ヶ月後くらいには、実践力が身につくのではないでしょうか。

オーケストラでは確かに音を出すので、違う小節の音を出したり、音程が違ったりすると、他の人にバレてしまうし、他の人が演奏しにくくなると言うのは厳然たる事実としてあります。でも、文京フィルハーモニック管弦楽団はそれでもいいと言っているのです。

どんなに調子っ外れでもいいんです(同じ場所2回間違うと指揮者から指摘はされますよ)。普通なら迷惑だから音を出すな、と言われるところを「全く問題ありません」とここにはっきり書いてあるんです。

大人になって楽器を始めたレイトスターターこそ本当に求めるべきは、自分の目的を達成するために助けてくれる良い先生と、1音でも1回でも、1曲でも多くアウトプットする機会なのだと思います。

私はいままで合奏の時に「音を出す前の呼吸が大切」と言い続けてきましたが、それは音を吸うことを指しているのだとずっと錯覚してきました。しかし、座禅を習った時に、禅では一番最初に息を吐くのだと教えてもらって、目から鱗が落ちました。

息を吸う前に吐く方が重要。

そして、音楽はインプットよりもアウトプットが重要。下手くそでも音を出す。合わなくても合奏する。考え方は色々あると思いますし、私の意見に反対の方もいるとは思いますが、少なくともうちの楽団は、初心者、未経験者にアウトプットの機会を提供し続けていきます。

ぜひ、一緒に合奏しましょう!

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About NO Masaharu

元々トロンボーン吹きですが、棒振りです。好きな作曲家はベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ブルックナーです。 ビールと餃子とカレーが大好きです。

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