柳家小三治とカラヤン

おはようございます。指揮者のひともぢです。

昨日、噺家の柳家小三治師匠の訃報に接し、膝から頽れるほど衝撃を受けています。落語家ではなく、「噺家」という言葉にこだわった人間国宝の小三治については、改めて書くまでもないとは思いますが、このブログを読んでくれているクラシックファンの中には落語なんて聞かないよ、という方もいると思いますので、ちょっとだけ解説します。

噺家には屋号があって、「柳家」とか「三遊亭」とか「桂」とか「林家」とかが有名だと思いますが、それぞれの屋号には「止め名」というのがあって、それぞれの屋号で最終的に奥義に達した第一人者が名乗ることになっています。

柳家の止め名は「小さん」で、現在は六代目柳家小さんが活躍されていますが、名人揃いの小さんの中で先代の五代目小さんは落語界初の人間国宝になり、私の年代だと、永谷園のお味噌汁のCMでお茶の間にも広く顔の売れていた大名人でした。

小三治は小さんの弟子で、本来であれば、その芸といい、人間性といい、止め名の小さんに相応しい噺家でしたが、彼は彼らしく、小さんを名乗らないことを早々に宣言して、我が道を行きました。ちなみに、先代の小さんもそうでしたが、柳家の芸風として滑稽話を仏頂面でやるというのがあります。すごくつまらなそうに、面白いことを言うんですね。本当に名人芸でした。

本当はもっともっと小三治の話を書きたいのですが、クラシックファンが「カラヤンはいつ出てくるんだ!」とヤキモキしているでしょうから、先を急ぎます。

小三治は若い頃は、革ジャンを着てバイクに乗るなど、従来の噺家のイメージからはかけ離れた部分もありました。草野球チームなんで野球もやっていたようですが、とりわけ、クラシック音楽とオーディオに造詣が深く、私は中学生や高校生の頃、音楽雑誌やオーディオ雑誌で柳家小三治という名前を知ったくらいでした。

その小三治がカラヤンについては非常に辛口で、要約すると、あざとく棒を振り、人を感心させようという下心が透けて見えるので嫌いだ、と言っているのです。

カラヤンファンの皆さんすみません。私が言っているんではなくて、小三治が言っています。

ちなみに、これまたクラシックファンには非常に有名な、指揮者で評論家の宇野功芳さんも同様にカラヤンには辛口で、豪華なだけで無内容と評したのはあまりに有名です。

カラヤンファンの皆さんすみません。私が言っているんではなくて、宇野功芳が言っています。

しかし、お二人の影響を色濃く受けた私は、見事にカラヤン嫌いに育ってしまいましてね。もちろんカラヤンにもいい演奏があるので愛聴しているものはあるんですが、一体にカラヤンは避ける傾向にあります(一番最初に聞いたクラシックのレコードがカラヤンの惑星であったにも関わらず)。

でね、今日の私からのメッセージは「カラヤンのことが嫌いになっても、小三治のことは嫌いにならないでね。」でした。

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About NO Masaharu

元々トロンボーン吹きですが、棒振りです。好きな作曲家はベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ブルックナーです。 ビールと餃子とカレーが大好きです。