気の利く人、利かない人

こんにちは、すっかり寒くなってきましたが、今年はみかんとりんごを食べて風邪と戦っていこうと思っています。指揮者のひともぢです。

アマチュアオーケストラを趣味の活動として続けていくには、ただ単に音楽好きな人が集まって楽器だけをいじっていれば良いわけではない、という点で非常にややこしく面倒なものです。

毎週練習をするには、練習会場の確保というのが欠かせないわけで、みんな楽器は演奏したいけど、会場確保のために働くのはやりたくないし、できればやらないで済ませたいと思う人が多いのも、人情としてはわかります。

メンバーが完全に固定ならば、リクルート活動もしなくていいわけですが、オーケストラのように大人数の組織は、どうしても楽員募集の活動もしなくてはなりませんし、演奏会をやるとなると、演奏会場確保から始まって、宣伝や、当日の進行など、ひとイベントやるだけでやるべきこと、やらなくてはいけないことは山のようにあるわけです。

入団すると強制的に係を割り当てられるというオーケストラも多いようですが、趣味の活動なのでみんなが公平に分担するという意味では民主的なのかもしれません。

文京フィルでは、強制的に割り当てることはしないんですが、基本的にはやれることをやって楽団に貢献、できないことはやらない。というポリシーで運営しています。もし楽員の中で誰もやらなかったら、それは誰もやりたくない、できないのだから、やらない。ということにしています。

結局は、楽員の中で、働く人と働かない人というのは、はっきり分かれてきて、特にベテランになればなるほど、「自分は何回もやった」という思いがあるのか、働かない傾向があります。

ここまでのエントリは多分、以前にも書いているんですが、最近思うのは、気の利く人と利かない人がいて、気の利かない人は合奏もあまり上手にできない、ということに気が付いたのです。

仕事をやってくれる気持ちはみんなあると思うんです。しかし人によって仕事の完成度というか、達成度に違いがあって、何を目的に仕事をしているのかでいうと人によって大きな違いがあります。

本当に細かいことに気が付いて、相手の立場に立って楽団の仕事ができる人がいる一方。厳しいことを言えば、言われたことに答えるだけで、その質問がなぜ発せられたかには全く思いが至らない(ように見える)人や、一つのコマンドを与えられたら、そのことだけしかできない人もいます。そしてそういう人の合奏は……。推して知るべし。

今日、言いたいことは趣味の活動だから、仕事のクオリティを上げましょう、という話しではなく、一つのことだけを考えていては合奏はできないし、どちらかというと自分の主張ではなく、自分の音が届いた相手がどう思うのかを考えて合奏をしないと「気の利かない人だな」と思われるんだろうと思います。

オーケストラなので、一人で演奏することはほとんどないわけです。自分の音が誰に届いて、それを聞いた人がどう思うのか?これを考えながら合奏するだけで全然違うと思うのです。

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About NO Masaharu

元々トロンボーン吹きですが、棒振りです。好きな作曲家はベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ブルックナーです。 ビールと餃子とカレーが大好きです。

入団面接で話すこと

おはようございます。指揮者のひともぢでございます。

先週の土曜日は楽団初のインスタライブを行いました。より多くの人に楽団のことを知ってもらうのが目的ですが、双方向でコミュニケーションが取れるという点が魅力で、今のところ、TwitterやInstagramに寄せられた質問に答えたり、お悩み相談に応えるようなことをやっていこうと思います。

インスタライブは、楽員が音出しをしている時間にやるので、あまり長時間はできないんですが、音出し時間はもう一つ「入団面接」の時間でもあります。

文京フィルは楽器さえ持っていればどんな人でも入れますが、見学者と楽団の双方が納得してから入団してもらうために、入団申請書を提出してから4回出席すると、入団面接になります。

いままで、入団面接で「落ちた」人は一人もいません(それ以前にルールを守ってもらえないとか、挨拶をしてくれないとかで、見学辞退された方はいますが)。

面接で楽団から話していることがありますが、どうも、入団してしまうとそのことを忘れてしまうようで、今日はそのことについて書いておこうと思います。

この楽団の考え方のうち重要な3ポイントについて必ず全員に話をしますが、一つ目は「インターネットで集まった楽員なので、考え方や、大切にするものやことなどは、全員バラバラで、共通の「常識」のようなものはありません。」ということです。

これはどういうことかというと、この楽団のやり方や考え方みたいなものはあります(あとで説明します)。しかし「自分が思っている常識」とそれは違っているし、そもそも人間が40人も50人もいる団体で、その「常識」が同じだということはない、という当たり前の事実なんです。

しかし、人は、特に年齢を重ねると、自分の信じてきた常識が社会常識で、それを守らない人を「非常識」と判断しがちです。最近聞いた言葉に「正義なんてなくて、「俺の正義」があるだけだ」というのがあります。まさにそれなんです。

自分のことが正しいと思っている人は、それを他人に押し付けがちなんですね。それはあなたの正しさで、あなたの常識で、あなたの価値観なんです。否定されることは絶対にないですが、それを他人に強要することもできないんです。

価値観や常識はバラバラであることが大前提。だから話してくれないと、理解できない。これがうちの楽団の一番最初の出発点です。

先ほども書きましたが、その一方で楽団が連綿と続けてきた考え方や価値観はあります。それは守っていくので、自分が正しいと思うこととはずれが必ず生じます。

2つ目のポイントは、そうした「ずれ」が生じた時に、うちの楽団は「出席回数の多い人の意見を重くみます」ということです。

この楽団は、いろんな意見があることを否定しません。いろんな考え方があることの方が面白いとも思っています。そして、それは他人に表明することで、他人が理解できるので、「言わなくても常識だ」というのは通用しません。

いろんな意見があることは良いことですが、楽団で何か行動するときに、いろんな行動をすることはなかなか難しく、一つを選ばなくてはならないという場面が出てきます。その時に、全員の意見を採用するわけにはいかないから、何かを選ぶ時には出席回数の多い人の意見が採用されます。つまり、「あなたの正義は通らないこともある」んです。

このことを入団面接の時に全員に伝えているんですが、楽団に長くいると、どうもそのことを忘れてしまい。自分と考え方が違うのでやめます。とか、自分の意見が通らないのでやめます。という人が出てきます(ひともぢが間違っている。という人多し)。

楽団と100%考え方があっていれば、それはそれで幸せだと思いますが、現代社会において何らかのコミュニティにいて、自分の意見が100%通ることなんてないんです。楽団創設者の私でさえ、意見を曲げられることがあるくらいですから。

ちなみに3つ目のポイントは、趣味の活動なので、入団が早いか遅いかとか、年齢や性別などは関係ないということです。うちの楽団は入団の時に、年齢も聞きませんし、性別も聞きません。音楽に関係ないからです(ただし、緊急事態があって病院にかかるような場面があるので、生年月日はお聞きします)。

年上が無条件で偉いというのは、多分儒教の影響だと思うのですが、先に生まれただけで偉いなんていうのは馬鹿げています。すべからく他人は尊重しなければならないのであって、歳の上下は関係ないです。もちろん性別なんてどうでもいいことです。

趣味の活動ですから、みんなフラットに平等です。ただし、しつこいですが、うちの楽団では出席回数は重要視します。先に入団していても全然練習に来ない人より、後から入っても練習に参加している人の意見が重くみられるのです。

最後にまとめてポイントを書いておきます。

1)意見や考え方は全員バラバラが当たり前。だから言わないと他人には伝わらない

2)多様な意見があることを良しとはしますが、何かを選ばなくてはいけない時は、楽器の上手い下手ではなく、出席回数を優先します。

3)楽団歴や、年齢、性別、国籍、楽器の上手い下手、そんなものによるヒエラルキーは認めません。他人はすべて尊重しなければならないし、重要なのは出席回数です。

これがうちの楽団の「価値観」です。

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