そろりそろり

おはようございます。指揮者のひともぢです。

緊急事態宣言が明けて今日で4週間。昨日までずっと前週比で感染者が減っており、今のところ明確なリバウンドは起きていません。

考えてみると、感染者が増える時というのは、目に見えて棒グラフが伸びて、ある段階で「緊急事態宣言」が発出されるから非常にわかりやすいのですが、収まる時というのは、どうなんでしょう?

私はなんでも始める時には、終わり方というのを考えるようにしています。アマオケを作り始めた時、このオケは100年続くことが目標だから、私が死んだ後も続くことを目指していますし、死んだ後なのでどうしようもない、というものです。

しかし、例えば乗っ取りにあうとか、反対に楽員が壊滅的に少なくなるなど、続けられなくなるパターンは何種類か想定していました。幸い、私の手で解散を選択しなくてはならないような状況にはなっていないので、ホッとしているところです。

さて、例えば天然痘はWHOが撲滅を宣言しましたが、私が知る限り、人類が撲滅できた感染症は天然痘だけだと思います。そしてこの新型コロナウイルスの感染症ですが、撲滅はできないでしょうから、「いつの間にか収まっていた」という状態になるものと想像しています。

私は、この冬で感染者がそれほど増えずに収束に向かうパターンと、この冬にリバウンドしてもう1年付き合うパターンと2パターンを想定しています。

リバウンドした場合は、ワクチンや治療薬や医療の稼働率などそれぞれの指標を見ながら付き合っていくことになると思いますが、結局来年の冬が来るまでは警戒を解くことができないでしょうから、羹に懲りて膾を吹く状態にならざるを得ないと思うんですね。

収束に向かうパターンとしては、まず12月にみんなが恐る恐る騒ぎ始める。もちろん自粛を続けるひとも一定数いるでしょうし、マスクを外すことはできないと思いますが、小規模の忘年会などが実施されて、イベントも正常化していくでしょう。

1月になり、2月になっても、感染者が増えなかれば、3月、気温が高くなってくる頃には、完全に収束となるというのが私の読みです。

ということで、文京フィルとしては、来年5月の演奏会は正常に実施できることを願いつつ、例えば、弦楽器のプルト弾きも再開し、運営委員会も慎重に再開しと、一つずつ確認しながら進めていこうと思います。

ただ、油断大敵。ちょっとのミスで全てが水泡に帰すことは胸に留めておこうと思います。

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元々トロンボーン吹きですが、棒振りです。好きな作曲家はベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ブルックナーです。 ビールと餃子とカレーが大好きです。

インプットとアウトプット

おはようございます。指揮者のひともぢです。

緊急事態宣言が明けて、なんとか毎週練習できていますが、おかげさまで、見学者も毎週来てくれています。今もコロナ状況下ではありますが、コロナが始まった頃はとにかく管楽器はほとんど来ていて、弦楽器が各パート1人か2人と言う状況が長く続きました。

合奏はできるんですが、オーケストラっぽくなくて、吹奏楽のような音に聞こえるんですね。ようやく最近オーケストラっぽくなってきて、昔が戻ってきた気がします。

さて、見学者が増える時期に、うちの楽団は毎回同じ問題に突き当たります。それは、見学に来られる方のレベルに激しくばらつきがある。と言うことです。

最初に断っておくと、うちの楽団は楽器のレベルは一切問いませんので、楽器さえ持っていれば、どなたでも大歓迎です。しかし、実際に来られる方が、楽譜を前に手も足も出なくて、目を白黒しているというのは、結構良くあるパターンなんです。

これは本当に千差万別、人によって捉え方が様々で、1音も弾けなくても、オーケストラの中で練習の雰囲気を味わうだけで幸せでした。と言ってくれる人もいれば、皆さんの邪魔になるので自分にはまだ早いようです。といって背中を丸めて帰られる方もいます。

そういう方にも「こっちは全然大丈夫ですよ」と声はかけるのですが、やっぱりご本人が楽しめないのですから、長続きはしません。そこは楽しめるのも楽しめないのも性格のことなので、いいも悪いもないと私は思います。

しかし、吉田兼好の徒然草の百五十段に、皆さんに紹介したい文章があります。

私は、この精神でやるのが良いと思います。そう思ってこの楽団を続けてきました。

ゴルフでも「練習場で1万発打ってから、コースに出るのが良い」とか、そういうある程度の基礎を身につけてからというような考え方はあると思いますし、それ自体を否定はしません。でも、音楽をやる人は特に、人に迷惑をかけたくないと言う建前を言って、本音は人前で恥をかきたくない、という人が多いような気がします(私自身もそうだからです)。

インプットをしっかりしてから、アウトプットというのは、慎重で、丁寧で一見合理的な感じがしますが、少なくとも大人になってから楽器を始めた人には当てはまりません。

大切なのはアウトプットです。アウトプットして、アウトプットしてスッカスカになれば、自然と自分でもインプットに気が行くようになります。これが逆にインプット過多で、アウトプットがほとんどない人がすごく多くて、だから上達のスピードが遅いのではないか?と私は思うのです。

例え話が適切かどうかわかりませんが、英会話スクールにだけ通って英語ができるようになった大人っているのでしょうか?私はいないか、いてもすごく稀なんだと思います。逆に、英語なんかできなくても、アメリカに引っ越して、英語社会で暮らせば、3ヶ月後くらいには、実践力が身につくのではないでしょうか。

オーケストラでは確かに音を出すので、違う小節の音を出したり、音程が違ったりすると、他の人にバレてしまうし、他の人が演奏しにくくなると言うのは厳然たる事実としてあります。でも、文京フィルハーモニック管弦楽団はそれでもいいと言っているのです。

どんなに調子っ外れでもいいんです(同じ場所2回間違うと指揮者から指摘はされますよ)。普通なら迷惑だから音を出すな、と言われるところを「全く問題ありません」とここにはっきり書いてあるんです。

大人になって楽器を始めたレイトスターターこそ本当に求めるべきは、自分の目的を達成するために助けてくれる良い先生と、1音でも1回でも、1曲でも多くアウトプットする機会なのだと思います。

私はいままで合奏の時に「音を出す前の呼吸が大切」と言い続けてきましたが、それは音を吸うことを指しているのだとずっと錯覚してきました。しかし、座禅を習った時に、禅では一番最初に息を吐くのだと教えてもらって、目から鱗が落ちました。

息を吸う前に吐く方が重要。

そして、音楽はインプットよりもアウトプットが重要。下手くそでも音を出す。合わなくても合奏する。考え方は色々あると思いますし、私の意見に反対の方もいるとは思いますが、少なくともうちの楽団は、初心者、未経験者にアウトプットの機会を提供し続けていきます。

ぜひ、一緒に合奏しましょう!

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柳家小三治とカラヤン

おはようございます。指揮者のひともぢです。

昨日、噺家の柳家小三治師匠の訃報に接し、膝から頽れるほど衝撃を受けています。落語家ではなく、「噺家」という言葉にこだわった人間国宝の小三治については、改めて書くまでもないとは思いますが、このブログを読んでくれているクラシックファンの中には落語なんて聞かないよ、という方もいると思いますので、ちょっとだけ解説します。

噺家には屋号があって、「柳家」とか「三遊亭」とか「桂」とか「林家」とかが有名だと思いますが、それぞれの屋号には「止め名」というのがあって、それぞれの屋号で最終的に奥義に達した第一人者が名乗ることになっています。

柳家の止め名は「小さん」で、現在は六代目柳家小さんが活躍されていますが、名人揃いの小さんの中で先代の五代目小さんは落語界初の人間国宝になり、私の年代だと、永谷園のお味噌汁のCMでお茶の間にも広く顔の売れていた大名人でした。

小三治は小さんの弟子で、本来であれば、その芸といい、人間性といい、止め名の小さんに相応しい噺家でしたが、彼は彼らしく、小さんを名乗らないことを早々に宣言して、我が道を行きました。ちなみに、先代の小さんもそうでしたが、柳家の芸風として滑稽話を仏頂面でやるというのがあります。すごくつまらなそうに、面白いことを言うんですね。本当に名人芸でした。

本当はもっともっと小三治の話を書きたいのですが、クラシックファンが「カラヤンはいつ出てくるんだ!」とヤキモキしているでしょうから、先を急ぎます。

小三治は若い頃は、革ジャンを着てバイクに乗るなど、従来の噺家のイメージからはかけ離れた部分もありました。草野球チームなんで野球もやっていたようですが、とりわけ、クラシック音楽とオーディオに造詣が深く、私は中学生や高校生の頃、音楽雑誌やオーディオ雑誌で柳家小三治という名前を知ったくらいでした。

その小三治がカラヤンについては非常に辛口で、要約すると、あざとく棒を振り、人を感心させようという下心が透けて見えるので嫌いだ、と言っているのです。

カラヤンファンの皆さんすみません。私が言っているんではなくて、小三治が言っています。

ちなみに、これまたクラシックファンには非常に有名な、指揮者で評論家の宇野功芳さんも同様にカラヤンには辛口で、豪華なだけで無内容と評したのはあまりに有名です。

カラヤンファンの皆さんすみません。私が言っているんではなくて、宇野功芳が言っています。

しかし、お二人の影響を色濃く受けた私は、見事にカラヤン嫌いに育ってしまいましてね。もちろんカラヤンにもいい演奏があるので愛聴しているものはあるんですが、一体にカラヤンは避ける傾向にあります(一番最初に聞いたクラシックのレコードがカラヤンの惑星であったにも関わらず)。

でね、今日の私からのメッセージは「カラヤンのことが嫌いになっても、小三治のことは嫌いにならないでね。」でした。

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初心者歓迎の分岐点

こんにちは、指揮者のひともぢです。

先週に緊急事態宣言が明けて、土曜日から練習が再開されました。引き続き、ソーシャルディスタンスや、マスクの付け替え着用、手洗い、消毒、定期の換気など、感染症対策を実施しながら、練習を続けていくことになります。

とはいえ、会社や家庭の事情で練習に参加できない楽員もおり、この1年半、大体20人前後での合奏が続いております。標準の2管編成から少し、小規模を想定して選曲していますが、管打楽器13人と考えて、弦楽器は15人はいて欲しいので、もう一声、安定して参加できるメンバーが揃うといいなと思います。

私たちの楽団は「初心者大歓迎」を掲げており、本当に、楽器さえ持っていればどなたでも入団いただくことは可能です。

しかし、その一方で現実には、楽器を始めても、オーケストラの曲を満足に演奏できるようになるには莫大な年数が必要です。

大体、3年くらいやっていれば、見学希望を出す勇気も湧いてくるというものですが、現実には楽器を持って半年でも、3年でもあんまり変わりないです。

では、安心してアマオケに参加できるには何年練習すれば良いか?という疑問が湧いてきます。

5年ですか?10年ですか?ヴァイオリンだと、3ポジションを覚えてからですか?ヴィブラートを教えてもらってからですか?

先に答えを書いてしまえば、「答えは自分がやりたいか、やりたくないか」で決めるのが良いと思います。

うちの楽団には、楽器を習って1ヶ月とか、3ヶ月という人もたまに、見学に来てくれます。見学の申請の時に楽器歴は聞かないし、ついでに書いておきますが、男女の性別も年齢も伺いません。趣味の活動に必要ないからです。

楽器を持って1ヶ月の人がオーケストラの曲を弾けるか?吹けるか?叩けるか?というと、答えは絶対的にNOです。でも、本人がそれでもよければ、難しい曲に挑戦するのはありですし、法律で決まっているのではないから、他人がそれをとやかくいうことはないでしょう。

反対に、全然演奏できないから、楽しくない。ということもあると思います。真面目で正直な人ほど、その傾向があるのですが、「全然弾けなくて迷惑をかけるので、もう少し練習してから参加します」と言って、見学を辞退してしまうのです。

それも、本人の選択だから、絶対的に尊重されるべきだし、他人から強制されることは一つもないのですが、私から言わせれば「もったいない」

前述の通り、例えばヴァイオリンは10年習っても、アマオケで十分に満足して演奏できるようになるか、ならないかという楽器です。弦楽器と管楽器でイメージが少し違うと思いますが、中学校に入って吹奏楽部に入ったら、3ヶ月後には全員楽器を持って、先輩と一緒に音を出すようなペースですよね?

大人になって楽器を始めた人が多いから、学生時代のように毎日練習できないです。と仰る方も多いです。しかし、「だからこそ!」なのです。

毎日練習することができないからこそ、さっさとアマオケに入って、実践を積んでいかないと、いつまで経っても目標を達成することはできません。

習いに行っている先生が「絶対にやめろ」という場合もあります。それも大切ですが、その時は反対に「ではこのペースで練習して、いつころオーケストラに入れるか教えてください」と丁寧に質問してみるのがいいと思います。

習い事をダラダラとやっているのは時間とお金の無駄ですから、目標をはっきり設定して、それに向かって助言してくれる先生が良い先生だと私は思います。

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