大人の部活 オーケストラの草野球

年の瀬も押し迫ってきました。ものすごい寒波がやってきているようですが、みなさんお元気でしょうか?指揮者のひともぢです。

年末なんで今年を振り返ろうと思ったんですが、危うく2020年を振り返ると書きそうになるくらい、今が何年なのかよくわからなかったし、今年21年は緊急事態宣言のせいで、練習が半分しかできないという、うちのオケにとって壊滅的な一年でした。

しかし、10月に緊急事態宣言が明けてから、順調に見学者、入団者が増えて、来年の話をすれば鬼が笑うと言いますが、笑ってもらって結構!きっと21年は良い年になると思います。

いま、楽団として一番力を入れているのがインスタライブです。

https://www.instagram.com/bpo2006/

peingという質問機能を使って、twitterでみなさんから寄せられた質問に土曜日のお昼に10分程度お答えするライブを毎週やっています。

最初の週こそ数名同時視聴者がいたんですが、その後数週間は大体1名の方に向かって語りかける形になりました。(再生回数としては50回ぐらいは見てもらえているようです)。年内最後のライブでは4名の方が見てくれていて、温かいコメントもいただけましたが、質問も毎週コンスタントに寄せてもらい、大変ありがたいことだと思っています。

楽員が音出しをしている時間を利用して、10分のライブをやることを通して、アマチュアオーケストラの実態を知ってもらえればなと思います。

質問内容も、時には鋭いものがあり、図らずも本音が出る楽しい内容になっていると思います。来年はますますコンテンツ充実させたいと思います。

さて、この前もらった質問にも関連するんですが、うちのオーケストラは長らく「大人の部活」を標榜しています。大人が集まって、部活動をやるように、趣味の活動を楽しもうという意味ですが、もう一つ「オーケストラの草野球」という言い方もしてきました。

多分、過去に似たようなエントリをしたこともあると思いますが、我々は楽器はプロが使っているようなものを使っています(値段は違いますが)。そしてプロが使っている楽譜と同じ楽譜を使って演奏しています。

しかし、技術的にはプロには遠く及びませんし、初心者主体の楽団なので、数多あるアマオケの中でも下手くそな部類であることは間違いありません(実際に日本一下手くそでもいいんです。そのことにはこだわりはないので)。

ただ、土曜日に仲間が集まって、一生懸命練習をすることを目的にしている楽団だから、上手か下手かはどうでもいいんです。もちろん上手になろうと思って練習しますが、プロだって楽器持って1ヶ月は初心者で下手くそだったわけです。

現在どの位置にいるかは、その人それぞれなんです。でも、オーケストラが楽しいんです。

エラーしても、三振しても草野球が楽しいのと一緒です。中には勝つことだけが楽しいという人もいるし、いていいんです。でも、負けても野球がやりたいという人も否定されるべきではないんですね。

最近、友人に教えてもらったAMAZONプライムの番組で「プロ野球そこそこ昔ばなし」という番組があります。

みなさん、それほどプロ野球に興味がないかもしれませんが、私が子供の頃は小学生の憧れの職業の第一は不動のプロ野球選手だったんです。

今年、大谷翔平のおかげで随分と野球に注目が集まった年だったと思いますが、私は昭和のプロ野球が好きなんです。

あ、話がずれましたが(いつものことだし、わざとやっている節もある)、この「プロ野球そこそこ昔ばなし」のコンセプトが「往年の名選手達が草野球のテンションで思い出話を繰り広げる同窓会系野球バラエティ」なんです。

草野球というのはプロ野球とは違いますが、楽しいものであることはみんな知っているんです。プロ野球やメジャーリーグの価値観を草野球に持ち込む大人はないんですね。

ところが、オーケストラはなぜか音楽アカデミズムが跳梁跋扈していて、下手な人は上手な人に虐げられて、肩身の狭い思いをし続けるわけです。それが嫌になって楽器を止める人も多いと聞きます。

文京フィルは「真剣」です。真剣ですが、下手くそでもいいじゃないかというオーケストラです。オーケストラの草野球です。

来年はこの文京フィルが久しぶりに演奏会を行います(コロナが落ち着いていれば)。もし見学に行こうかどうか迷っている人は、twitterを見ていただき、Youtubeを見ていただき、毎週土曜日のインスタライブを見てください(次は1月8日です)。きっと、どんな楽団かはすぐにわかってもらえると思います。

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About NO Masaharu

元々トロンボーン吹きですが、棒振りです。好きな作曲家はベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ブルックナーです。 ビールと餃子とカレーが大好きです。

話の長い音楽家

12月に入りすっかり寒くなってきました。お風邪など引いておりませんでしょうか。指揮者のひともぢです。

TVのクラシック番組は古くは「オーケストラがやってきた」という名番組があり、今でも続く「題名のない音楽会」があります。オーケストラがやってきた、は山本直純さんが相当に企画に加わっていたであろう、空前絶後のバラエティ感覚で、多分後にも先にもあれくらいのクオリティの番組は出てこないのではないだろうか?と思います。

題名のない音楽会は、出光興産の一社提供で本当に頭が下がるんですが、企画をやっている人が、面白がらせようとこねくり回すのが玉に瑕。この辺は山本直純さんくらいの大局感を持った人ではないと難しいのだろうな、と思います。

NHKでは古くは「N響アワー」が名番組だったのですが、1時間という縛りを勝手に設けて、大曲が演奏できなかったので、発展的解消されてしまいましたね。

私が見ていた頃の司会者は作曲家の芥川也寸志さんが司会者で、芥川也寸志さんといえば「パイプの煙」シリーズが音楽家のエッセイとしては嚆矢であるといまでも確信しています。有名人の本は8割以上がゴーストライターによるものなんですが、芥川也寸志さんは講演も面白くて、一度だけ聞いた講演会ですごく強い印象を受けて、それからパイプの煙シリーズを読みました。

その後の司会者の指揮者の岩城裕之さんも、大変話の面白い方で、さらにその後の司会者の作曲家の池辺晋一郎さんの印象はお若い方にもあるのではないでしょうか?

N響アワーは、その後ららら♪クラシックという番組に引き継がれましたが、そのあとが現在の「クラシックTV」になったわけです。

私は、音楽業界全体に蔓延する、容姿差別には敢然と立ち向かいたいので、そもそも容姿の良い音楽家にはへそ曲がり的に一家言あるので、司会の清塚信也さんなんか、お喋りなだけの男芸者だと思っていました(大変失礼)。

しかし、興味のあるテーマの時にだけ見ていると大変に面白く、すっかり清塚さんのファンになり、最近では必ず録画して見るようになりました。

先週のクラシックTVでは清塚さんのコンサートの様子をやっていましたが、演奏と同じ時間だけ喋ると聞いて、私は即座にさだまさしさんを思い出しました。

私が小学生の時に「精霊流し」「関白宣言」をヒットさせた、さだまさしさんのファンが私の周りには多くて、私があまりに興味を示さないものだから、彼のラジオやFMで流された彼のコンサートの様子などを聞かされました。

さだまさしさんは落研にいたことがあったはずで、とにかく話が面白いんです。さださんのコンサートでは「では曲に行きます」というと「えー!」と声が上がるほどだと聞いたことがあります。

そこで私は気がついたんです。いい音楽家は話が面白くて長いんだな、と。

そして、大きく反省しているんです。

私も話が長いことでは、人後に落ちない自信がありますが、私の場合、話が面白くないから評判が悪いのだな、ということに思いあたったのです。毎週土曜日にやっているインスタライブもいまいち視聴者が伸びないんですが、それもきっとわたしのはなしがつまらないからなんだな、と合点が行きました。

ということで、これからスコアの勉強に使う時間を、落語の勉強に費やそうと思います。

……いや、それはまずいか。

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気の利く人、利かない人

こんにちは、すっかり寒くなってきましたが、今年はみかんとりんごを食べて風邪と戦っていこうと思っています。指揮者のひともぢです。

アマチュアオーケストラを趣味の活動として続けていくには、ただ単に音楽好きな人が集まって楽器だけをいじっていれば良いわけではない、という点で非常にややこしく面倒なものです。

毎週練習をするには、練習会場の確保というのが欠かせないわけで、みんな楽器は演奏したいけど、会場確保のために働くのはやりたくないし、できればやらないで済ませたいと思う人が多いのも、人情としてはわかります。

メンバーが完全に固定ならば、リクルート活動もしなくていいわけですが、オーケストラのように大人数の組織は、どうしても楽員募集の活動もしなくてはなりませんし、演奏会をやるとなると、演奏会場確保から始まって、宣伝や、当日の進行など、ひとイベントやるだけでやるべきこと、やらなくてはいけないことは山のようにあるわけです。

入団すると強制的に係を割り当てられるというオーケストラも多いようですが、趣味の活動なのでみんなが公平に分担するという意味では民主的なのかもしれません。

文京フィルでは、強制的に割り当てることはしないんですが、基本的にはやれることをやって楽団に貢献、できないことはやらない。というポリシーで運営しています。もし楽員の中で誰もやらなかったら、それは誰もやりたくない、できないのだから、やらない。ということにしています。

結局は、楽員の中で、働く人と働かない人というのは、はっきり分かれてきて、特にベテランになればなるほど、「自分は何回もやった」という思いがあるのか、働かない傾向があります。

ここまでのエントリは多分、以前にも書いているんですが、最近思うのは、気の利く人と利かない人がいて、気の利かない人は合奏もあまり上手にできない、ということに気が付いたのです。

仕事をやってくれる気持ちはみんなあると思うんです。しかし人によって仕事の完成度というか、達成度に違いがあって、何を目的に仕事をしているのかでいうと人によって大きな違いがあります。

本当に細かいことに気が付いて、相手の立場に立って楽団の仕事ができる人がいる一方。厳しいことを言えば、言われたことに答えるだけで、その質問がなぜ発せられたかには全く思いが至らない(ように見える)人や、一つのコマンドを与えられたら、そのことだけしかできない人もいます。そしてそういう人の合奏は……。推して知るべし。

今日、言いたいことは趣味の活動だから、仕事のクオリティを上げましょう、という話しではなく、一つのことだけを考えていては合奏はできないし、どちらかというと自分の主張ではなく、自分の音が届いた相手がどう思うのかを考えて合奏をしないと「気の利かない人だな」と思われるんだろうと思います。

オーケストラなので、一人で演奏することはほとんどないわけです。自分の音が誰に届いて、それを聞いた人がどう思うのか?これを考えながら合奏するだけで全然違うと思うのです。

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入団面接で話すこと

おはようございます。指揮者のひともぢでございます。

先週の土曜日は楽団初のインスタライブを行いました。より多くの人に楽団のことを知ってもらうのが目的ですが、双方向でコミュニケーションが取れるという点が魅力で、今のところ、TwitterやInstagramに寄せられた質問に答えたり、お悩み相談に応えるようなことをやっていこうと思います。

インスタライブは、楽員が音出しをしている時間にやるので、あまり長時間はできないんですが、音出し時間はもう一つ「入団面接」の時間でもあります。

文京フィルは楽器さえ持っていればどんな人でも入れますが、見学者と楽団の双方が納得してから入団してもらうために、入団申請書を提出してから4回出席すると、入団面接になります。

いままで、入団面接で「落ちた」人は一人もいません(それ以前にルールを守ってもらえないとか、挨拶をしてくれないとかで、見学辞退された方はいますが)。

面接で楽団から話していることがありますが、どうも、入団してしまうとそのことを忘れてしまうようで、今日はそのことについて書いておこうと思います。

この楽団の考え方のうち重要な3ポイントについて必ず全員に話をしますが、一つ目は「インターネットで集まった楽員なので、考え方や、大切にするものやことなどは、全員バラバラで、共通の「常識」のようなものはありません。」ということです。

これはどういうことかというと、この楽団のやり方や考え方みたいなものはあります(あとで説明します)。しかし「自分が思っている常識」とそれは違っているし、そもそも人間が40人も50人もいる団体で、その「常識」が同じだということはない、という当たり前の事実なんです。

しかし、人は、特に年齢を重ねると、自分の信じてきた常識が社会常識で、それを守らない人を「非常識」と判断しがちです。最近聞いた言葉に「正義なんてなくて、「俺の正義」があるだけだ」というのがあります。まさにそれなんです。

自分のことが正しいと思っている人は、それを他人に押し付けがちなんですね。それはあなたの正しさで、あなたの常識で、あなたの価値観なんです。否定されることは絶対にないですが、それを他人に強要することもできないんです。

価値観や常識はバラバラであることが大前提。だから話してくれないと、理解できない。これがうちの楽団の一番最初の出発点です。

先ほども書きましたが、その一方で楽団が連綿と続けてきた考え方や価値観はあります。それは守っていくので、自分が正しいと思うこととはずれが必ず生じます。

2つ目のポイントは、そうした「ずれ」が生じた時に、うちの楽団は「出席回数の多い人の意見を重くみます」ということです。

この楽団は、いろんな意見があることを否定しません。いろんな考え方があることの方が面白いとも思っています。そして、それは他人に表明することで、他人が理解できるので、「言わなくても常識だ」というのは通用しません。

いろんな意見があることは良いことですが、楽団で何か行動するときに、いろんな行動をすることはなかなか難しく、一つを選ばなくてはならないという場面が出てきます。その時に、全員の意見を採用するわけにはいかないから、何かを選ぶ時には出席回数の多い人の意見が採用されます。つまり、「あなたの正義は通らないこともある」んです。

このことを入団面接の時に全員に伝えているんですが、楽団に長くいると、どうもそのことを忘れてしまい。自分と考え方が違うのでやめます。とか、自分の意見が通らないのでやめます。という人が出てきます(ひともぢが間違っている。という人多し)。

楽団と100%考え方があっていれば、それはそれで幸せだと思いますが、現代社会において何らかのコミュニティにいて、自分の意見が100%通ることなんてないんです。楽団創設者の私でさえ、意見を曲げられることがあるくらいですから。

ちなみに3つ目のポイントは、趣味の活動なので、入団が早いか遅いかとか、年齢や性別などは関係ないということです。うちの楽団は入団の時に、年齢も聞きませんし、性別も聞きません。音楽に関係ないからです(ただし、緊急事態があって病院にかかるような場面があるので、生年月日はお聞きします)。

年上が無条件で偉いというのは、多分儒教の影響だと思うのですが、先に生まれただけで偉いなんていうのは馬鹿げています。すべからく他人は尊重しなければならないのであって、歳の上下は関係ないです。もちろん性別なんてどうでもいいことです。

趣味の活動ですから、みんなフラットに平等です。ただし、しつこいですが、うちの楽団では出席回数は重要視します。先に入団していても全然練習に来ない人より、後から入っても練習に参加している人の意見が重くみられるのです。

最後にまとめてポイントを書いておきます。

1)意見や考え方は全員バラバラが当たり前。だから言わないと他人には伝わらない

2)多様な意見があることを良しとはしますが、何かを選ばなくてはいけない時は、楽器の上手い下手ではなく、出席回数を優先します。

3)楽団歴や、年齢、性別、国籍、楽器の上手い下手、そんなものによるヒエラルキーは認めません。他人はすべて尊重しなければならないし、重要なのは出席回数です。

これがうちの楽団の「価値観」です。

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そろりそろり

おはようございます。指揮者のひともぢです。

緊急事態宣言が明けて今日で4週間。昨日までずっと前週比で感染者が減っており、今のところ明確なリバウンドは起きていません。

考えてみると、感染者が増える時というのは、目に見えて棒グラフが伸びて、ある段階で「緊急事態宣言」が発出されるから非常にわかりやすいのですが、収まる時というのは、どうなんでしょう?

私はなんでも始める時には、終わり方というのを考えるようにしています。アマオケを作り始めた時、このオケは100年続くことが目標だから、私が死んだ後も続くことを目指していますし、死んだ後なのでどうしようもない、というものです。

しかし、例えば乗っ取りにあうとか、反対に楽員が壊滅的に少なくなるなど、続けられなくなるパターンは何種類か想定していました。幸い、私の手で解散を選択しなくてはならないような状況にはなっていないので、ホッとしているところです。

さて、例えば天然痘はWHOが撲滅を宣言しましたが、私が知る限り、人類が撲滅できた感染症は天然痘だけだと思います。そしてこの新型コロナウイルスの感染症ですが、撲滅はできないでしょうから、「いつの間にか収まっていた」という状態になるものと想像しています。

私は、この冬で感染者がそれほど増えずに収束に向かうパターンと、この冬にリバウンドしてもう1年付き合うパターンと2パターンを想定しています。

リバウンドした場合は、ワクチンや治療薬や医療の稼働率などそれぞれの指標を見ながら付き合っていくことになると思いますが、結局来年の冬が来るまでは警戒を解くことができないでしょうから、羹に懲りて膾を吹く状態にならざるを得ないと思うんですね。

収束に向かうパターンとしては、まず12月にみんなが恐る恐る騒ぎ始める。もちろん自粛を続けるひとも一定数いるでしょうし、マスクを外すことはできないと思いますが、小規模の忘年会などが実施されて、イベントも正常化していくでしょう。

1月になり、2月になっても、感染者が増えなかれば、3月、気温が高くなってくる頃には、完全に収束となるというのが私の読みです。

ということで、文京フィルとしては、来年5月の演奏会は正常に実施できることを願いつつ、例えば、弦楽器のプルト弾きも再開し、運営委員会も慎重に再開しと、一つずつ確認しながら進めていこうと思います。

ただ、油断大敵。ちょっとのミスで全てが水泡に帰すことは胸に留めておこうと思います。

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インプットとアウトプット

おはようございます。指揮者のひともぢです。

緊急事態宣言が明けて、なんとか毎週練習できていますが、おかげさまで、見学者も毎週来てくれています。今もコロナ状況下ではありますが、コロナが始まった頃はとにかく管楽器はほとんど来ていて、弦楽器が各パート1人か2人と言う状況が長く続きました。

合奏はできるんですが、オーケストラっぽくなくて、吹奏楽のような音に聞こえるんですね。ようやく最近オーケストラっぽくなってきて、昔が戻ってきた気がします。

さて、見学者が増える時期に、うちの楽団は毎回同じ問題に突き当たります。それは、見学に来られる方のレベルに激しくばらつきがある。と言うことです。

最初に断っておくと、うちの楽団は楽器のレベルは一切問いませんので、楽器さえ持っていれば、どなたでも大歓迎です。しかし、実際に来られる方が、楽譜を前に手も足も出なくて、目を白黒しているというのは、結構良くあるパターンなんです。

これは本当に千差万別、人によって捉え方が様々で、1音も弾けなくても、オーケストラの中で練習の雰囲気を味わうだけで幸せでした。と言ってくれる人もいれば、皆さんの邪魔になるので自分にはまだ早いようです。といって背中を丸めて帰られる方もいます。

そういう方にも「こっちは全然大丈夫ですよ」と声はかけるのですが、やっぱりご本人が楽しめないのですから、長続きはしません。そこは楽しめるのも楽しめないのも性格のことなので、いいも悪いもないと私は思います。

しかし、吉田兼好の徒然草の百五十段に、皆さんに紹介したい文章があります。

私は、この精神でやるのが良いと思います。そう思ってこの楽団を続けてきました。

ゴルフでも「練習場で1万発打ってから、コースに出るのが良い」とか、そういうある程度の基礎を身につけてからというような考え方はあると思いますし、それ自体を否定はしません。でも、音楽をやる人は特に、人に迷惑をかけたくないと言う建前を言って、本音は人前で恥をかきたくない、という人が多いような気がします(私自身もそうだからです)。

インプットをしっかりしてから、アウトプットというのは、慎重で、丁寧で一見合理的な感じがしますが、少なくとも大人になってから楽器を始めた人には当てはまりません。

大切なのはアウトプットです。アウトプットして、アウトプットしてスッカスカになれば、自然と自分でもインプットに気が行くようになります。これが逆にインプット過多で、アウトプットがほとんどない人がすごく多くて、だから上達のスピードが遅いのではないか?と私は思うのです。

例え話が適切かどうかわかりませんが、英会話スクールにだけ通って英語ができるようになった大人っているのでしょうか?私はいないか、いてもすごく稀なんだと思います。逆に、英語なんかできなくても、アメリカに引っ越して、英語社会で暮らせば、3ヶ月後くらいには、実践力が身につくのではないでしょうか。

オーケストラでは確かに音を出すので、違う小節の音を出したり、音程が違ったりすると、他の人にバレてしまうし、他の人が演奏しにくくなると言うのは厳然たる事実としてあります。でも、文京フィルハーモニック管弦楽団はそれでもいいと言っているのです。

どんなに調子っ外れでもいいんです(同じ場所2回間違うと指揮者から指摘はされますよ)。普通なら迷惑だから音を出すな、と言われるところを「全く問題ありません」とここにはっきり書いてあるんです。

大人になって楽器を始めたレイトスターターこそ本当に求めるべきは、自分の目的を達成するために助けてくれる良い先生と、1音でも1回でも、1曲でも多くアウトプットする機会なのだと思います。

私はいままで合奏の時に「音を出す前の呼吸が大切」と言い続けてきましたが、それは音を吸うことを指しているのだとずっと錯覚してきました。しかし、座禅を習った時に、禅では一番最初に息を吐くのだと教えてもらって、目から鱗が落ちました。

息を吸う前に吐く方が重要。

そして、音楽はインプットよりもアウトプットが重要。下手くそでも音を出す。合わなくても合奏する。考え方は色々あると思いますし、私の意見に反対の方もいるとは思いますが、少なくともうちの楽団は、初心者、未経験者にアウトプットの機会を提供し続けていきます。

ぜひ、一緒に合奏しましょう!

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柳家小三治とカラヤン

おはようございます。指揮者のひともぢです。

昨日、噺家の柳家小三治師匠の訃報に接し、膝から頽れるほど衝撃を受けています。落語家ではなく、「噺家」という言葉にこだわった人間国宝の小三治については、改めて書くまでもないとは思いますが、このブログを読んでくれているクラシックファンの中には落語なんて聞かないよ、という方もいると思いますので、ちょっとだけ解説します。

噺家には屋号があって、「柳家」とか「三遊亭」とか「桂」とか「林家」とかが有名だと思いますが、それぞれの屋号には「止め名」というのがあって、それぞれの屋号で最終的に奥義に達した第一人者が名乗ることになっています。

柳家の止め名は「小さん」で、現在は六代目柳家小さんが活躍されていますが、名人揃いの小さんの中で先代の五代目小さんは落語界初の人間国宝になり、私の年代だと、永谷園のお味噌汁のCMでお茶の間にも広く顔の売れていた大名人でした。

小三治は小さんの弟子で、本来であれば、その芸といい、人間性といい、止め名の小さんに相応しい噺家でしたが、彼は彼らしく、小さんを名乗らないことを早々に宣言して、我が道を行きました。ちなみに、先代の小さんもそうでしたが、柳家の芸風として滑稽話を仏頂面でやるというのがあります。すごくつまらなそうに、面白いことを言うんですね。本当に名人芸でした。

本当はもっともっと小三治の話を書きたいのですが、クラシックファンが「カラヤンはいつ出てくるんだ!」とヤキモキしているでしょうから、先を急ぎます。

小三治は若い頃は、革ジャンを着てバイクに乗るなど、従来の噺家のイメージからはかけ離れた部分もありました。草野球チームなんで野球もやっていたようですが、とりわけ、クラシック音楽とオーディオに造詣が深く、私は中学生や高校生の頃、音楽雑誌やオーディオ雑誌で柳家小三治という名前を知ったくらいでした。

その小三治がカラヤンについては非常に辛口で、要約すると、あざとく棒を振り、人を感心させようという下心が透けて見えるので嫌いだ、と言っているのです。

カラヤンファンの皆さんすみません。私が言っているんではなくて、小三治が言っています。

ちなみに、これまたクラシックファンには非常に有名な、指揮者で評論家の宇野功芳さんも同様にカラヤンには辛口で、豪華なだけで無内容と評したのはあまりに有名です。

カラヤンファンの皆さんすみません。私が言っているんではなくて、宇野功芳が言っています。

しかし、お二人の影響を色濃く受けた私は、見事にカラヤン嫌いに育ってしまいましてね。もちろんカラヤンにもいい演奏があるので愛聴しているものはあるんですが、一体にカラヤンは避ける傾向にあります(一番最初に聞いたクラシックのレコードがカラヤンの惑星であったにも関わらず)。

でね、今日の私からのメッセージは「カラヤンのことが嫌いになっても、小三治のことは嫌いにならないでね。」でした。

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初心者歓迎の分岐点

こんにちは、指揮者のひともぢです。

先週に緊急事態宣言が明けて、土曜日から練習が再開されました。引き続き、ソーシャルディスタンスや、マスクの付け替え着用、手洗い、消毒、定期の換気など、感染症対策を実施しながら、練習を続けていくことになります。

とはいえ、会社や家庭の事情で練習に参加できない楽員もおり、この1年半、大体20人前後での合奏が続いております。標準の2管編成から少し、小規模を想定して選曲していますが、管打楽器13人と考えて、弦楽器は15人はいて欲しいので、もう一声、安定して参加できるメンバーが揃うといいなと思います。

私たちの楽団は「初心者大歓迎」を掲げており、本当に、楽器さえ持っていればどなたでも入団いただくことは可能です。

しかし、その一方で現実には、楽器を始めても、オーケストラの曲を満足に演奏できるようになるには莫大な年数が必要です。

大体、3年くらいやっていれば、見学希望を出す勇気も湧いてくるというものですが、現実には楽器を持って半年でも、3年でもあんまり変わりないです。

では、安心してアマオケに参加できるには何年練習すれば良いか?という疑問が湧いてきます。

5年ですか?10年ですか?ヴァイオリンだと、3ポジションを覚えてからですか?ヴィブラートを教えてもらってからですか?

先に答えを書いてしまえば、「答えは自分がやりたいか、やりたくないか」で決めるのが良いと思います。

うちの楽団には、楽器を習って1ヶ月とか、3ヶ月という人もたまに、見学に来てくれます。見学の申請の時に楽器歴は聞かないし、ついでに書いておきますが、男女の性別も年齢も伺いません。趣味の活動に必要ないからです。

楽器を持って1ヶ月の人がオーケストラの曲を弾けるか?吹けるか?叩けるか?というと、答えは絶対的にNOです。でも、本人がそれでもよければ、難しい曲に挑戦するのはありですし、法律で決まっているのではないから、他人がそれをとやかくいうことはないでしょう。

反対に、全然演奏できないから、楽しくない。ということもあると思います。真面目で正直な人ほど、その傾向があるのですが、「全然弾けなくて迷惑をかけるので、もう少し練習してから参加します」と言って、見学を辞退してしまうのです。

それも、本人の選択だから、絶対的に尊重されるべきだし、他人から強制されることは一つもないのですが、私から言わせれば「もったいない」

前述の通り、例えばヴァイオリンは10年習っても、アマオケで十分に満足して演奏できるようになるか、ならないかという楽器です。弦楽器と管楽器でイメージが少し違うと思いますが、中学校に入って吹奏楽部に入ったら、3ヶ月後には全員楽器を持って、先輩と一緒に音を出すようなペースですよね?

大人になって楽器を始めた人が多いから、学生時代のように毎日練習できないです。と仰る方も多いです。しかし、「だからこそ!」なのです。

毎日練習することができないからこそ、さっさとアマオケに入って、実践を積んでいかないと、いつまで経っても目標を達成することはできません。

習いに行っている先生が「絶対にやめろ」という場合もあります。それも大切ですが、その時は反対に「ではこのペースで練習して、いつころオーケストラに入れるか教えてください」と丁寧に質問してみるのがいいと思います。

習い事をダラダラとやっているのは時間とお金の無駄ですから、目標をはっきり設定して、それに向かって助言してくれる先生が良い先生だと私は思います。

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再始動

おはようございます。指揮者のひともぢです。

昨日、緊急事態宣言が9月いっぱいで解除されることが決定されましたので、10月2日、今週の土曜日から、いよいよ練習再開です。

新型コロナウイルスが日本で見つかったのが19年の年末から20年の1月くらいにかけて、3月からなんだか自粛の動きが始まり、1回目の練習停止、6月から自粛が解け、練習を再開して、年内はなんとか、練習ができていました。

しかし21年の1月頭からの緊急事態宣言で、2回目の練習停止。これは1ヶ月と少しで解けたので、2月から練習再開できましたが、ゴールデンウィークを目前に3回目の練習停止。

2ヶ月弱、6月末にまん延等防止措置に移行して、練習再開、しかしたった3週間の練習再開で、4回目の練習停止。2ヶ月半の長き渡って、緊急事態宣言が出ていました。

緊急事態宣言下でも練習していたり、演奏会をしていた楽団もありますが、その一方で、私たち同様に自粛していたり、物理的に練習できなかった多くの楽団の様子をTwitterなどで見ることができて、日本全国のアマオケにとって本当に受難の時期であったと思います。

逆説的な言い方になりますが、私たちはプロではないので、生活がかかっているわけではありません(生活の直撃を受けている人も多いと思いますが)。

感染症の拡大には抵抗しつつ、やれることをやれる範囲で続けていけばいいのだと思います。

「鬼滅の刃」で鬼の始祖、鬼舞辻無惨は「雨が 風が 山の噴火が 大地の揺れが どれだけ人を殺そうとも 天変地異に 復讐しようという者はいない」と言っています。

全くその通りで(新型コロナウイルスが人為的に作られたという説もあるようですが)コロナウイルスは自然のものだから、文句を言っても始まりません。もっとも、対応がどうこうと政府や自治体に文句を言っても始まらないのですがね。この想いは秋の総選挙で晴らしましょう。

文句を言っても始まらないので、私たちは感染症対策をして、音楽活動をすることになります。前にも書きましたが、以前から冬になると風邪気味でも練習に参加する楽員がいました。体調が悪くても練習に参加するとは見上げた根性!と礼賛する向きもあるようですが、私は厳重に練習には来ないように楽員に申し伝えていました。

オーケストラの練習はどこでやるにせよ、密室になり、20人から30人程度の人間が集まる、感染症にとっては天国のような状況が発生します。私自身が風邪をひきやすいこともあり、(自己防衛を除いて)マスクをするような人は練習に来ないでくださいということを徹底していました。

今後は、加えて、マスク、手洗い、消毒、換気。この辺を徹底していくことになります。もうそれしかないんです。

いつか、この新型コロナウイするの脅威が低減される日が来るかと思いますが、仮にそうなったとしても、対策は何らか残り、全く以前の元に戻るということはないと思います。

リバウンド話もありますが、リバウンドは来るでしょう。もしかしたら毎年冬には練習できなくなることも考えなくてはいけないのかもしれませんが、いずれにしても、自分でコントロールできないことを心配しても仕方ありませんん。

自分にできることをしっかりやっていく。この当たり前のことを当たり前にやっていくしかないのだと思い、今回の練習再開を、貴重な幸福な時間だと思って大切に楽しむことにします。

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未来は予測しづらい

こんにちは、指揮者のひともぢです。

私ごとになるんですがね、もう2年と9ヶ月ステージに立っておりません。私が最後にステージに立ったのは2018年12月9日の第18回定期演奏会になります。

その後も、楽団としては第19回定期演奏会が2019年の9月21日に行われているんですが、その演奏会には私は出ていないんです。

自分の作ったオーケストラで指揮者をやっている私が演奏会に出ていないというがどういうことか、もしかすると想像できないかもしれませんが、楽団を作って10年以上が経ち、ほとんどのことを自分一人で決済して、自分一人でやってきた私が、「私」という存在を中心に楽団を運営すれば、持続可能性に問題があると考えたのです。

この楽団は、100年続くことを目指して作りました。私自身が楽しいとか、やりたいことをやるとかそういうことではなくて、楽器初心者にも門戸を開き、音楽のハードルを下げて、裾野を広げるために作ったのです。

そして、その「理念」は私が引退し、死んだ後も続かないと本物では無いと感じたのです。

音楽家は大抵自己中心的です。特に一部の優れた芸術家と、趣味で音楽をやっている人は極端に自己中心的です。ある意味、それで良い部分というのはあるのですが、その部分を満たしたいのであれば、他に良いオーケストラがいっぱいあります。

私たちのオーケストラは下手くそでも、一生懸命練習する人たちを応援したいと思って作ったのです。簡単にオーケストラに入れない人でも、ここで経験を積み、知識を増やし、練習してもっと上手なオケや、もっと大きなオケに行ってくれれば、それでいいんです。

そういうオーケストラは自己満足で運営するわけにはいきません。だから、私は音楽監督を人に譲り、自分は本番に乗らないのに、毎週の練習に行き、代振りをして、毎週楽員と酒を飲み、オケの運営にだけに徹して見る時期を作ったのです。

演奏会の運営もいままでは私が号令をかけてやっていましたが、なるべく任せるようにしました。いっぱい不備が見つかりましたが、それもいい経験になり、その後かなり上手に修正できています。

さて、他人にまるまる1つの演奏会を譲り、外から客観的に演奏会を見ることもやってみたのですが、まさかその半年後に新型コロナウイルスが猛威を振るい、ほぼ1年半(現時点で)練習がままならず、演奏会を2回も飛ばし、私自身 丸3年ステージで指揮ができないことになるとは、「あの時は」思いもしませんでした。

会社でも四半期の計画と同時に、中期計画などを立てます。私もこのオーケストラで2、3年後の中期計画と大雑把な10年の計画を立てて活動しています。いままではそれでほとんどうまくいっていました。

実はそれが砂上の楼閣であり、偶然の産物であったことを今回は痛感しました。もちろん、計画は必要です。少なくとも50人くらいの人間が関わり、年間で100万円くらいの動く団体なのですから、全くの無計画、行き当たりばったりというわけにはいきません。

しかし、計画に囚われてはいけないし、計画通りに進むとも限りません。未来から逆算して考えることはとても大切です(10年後にどういうオケになっていたいのか?とか10年後にどういう指揮者でいたいのか?という問いは大切です)。でも、それに対しては常に柔軟に対応しなくてはいけません。

また、先にお楽しみを取っておくのも間違いだと思いました。やりたいこと、やれそうなことはすぐに手をつけないと、人生はあまりに短すぎるし、不確実なことが多すぎるからです。

未来は予測しづらいですが、その未来を手中にしていくのも人生の楽しみなのだなということを痛感するこの頃です。

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About NO Masaharu

元々トロンボーン吹きですが、棒振りです。好きな作曲家はベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ブルックナーです。 ビールと餃子とカレーが大好きです。