指揮者のひともぢ28号でございます。
うちの楽団の演奏会も今回で9回目。クラシックコンサート、クラシックコンサート、色物コンサートと2年に3回の演奏会を行って来ました。
今回は諸処事情がありまして、演奏会のプログラムを変更して、ドボルジャークの交響曲9番「新世界より」をメインに据えたクラシックの王道と言うか、どの曲も非常に聴き馴染みのある、お客さんに喜ばれるようなプログラムになりました。
演奏会のプログラムというのは非常に悩むところで、色物コンサートの時は殆ど指揮者が選ぶのですが、通常のコンサートはメインの曲は評議会で決められます。時にマニアックになったり、自己満足になったりしてしまうのですが、私は常に、楽員の満足度と同時に、お客さんが聴きたい曲を選曲するよう意識しています。
この点、アマチュアの楽団はお客さんという視点が少し足りないように感じます。まずは自分が演奏したい曲。でもねぇ、アマチュアのプロほどは上手でない演奏で自己満足の選曲をされても、そんなもの聞きたいと思わないと、私などは思う方なので、逆にうちの定期演奏会はお客さんのことを意識した選曲をしています。
因に余談ですが、楽団内でアンサンブルとかやる時も、まず自分の演奏したい曲を選曲する傾向が、特に初心者に多いと思っています。例えば弦楽器の人ならアンサンブルと言えば「アイネ クライネ ナハト ムジーク」をやりたがるんですが、これは弾いている方は楽しくても、聞いている方は全然楽しくないんですね。凄く有名な曲だから、ちょっとの間違いでもアララとなるんです。しかも大抵音程悪いから背中がかゆくなること請け合いです。
演奏会も同様で、自己満足でいいなら、会場を借りてクローズで身内だけで演奏やっても同じなんです。でもオープンにして、我々のことを全く知らない人が来てくれる、聞いて感想を書いてくれる。これが「音楽」なのだと思うのです。
さて、だから今まで避けて来たような曲に今回挑戦しました。
カルメンの第1組曲は管楽器のソロに取ってチャレンジングな曲でした。もうそこだけちゃんとしておけば、指揮者は何にもすることがないのがこの曲の特徴です。本当はもう少しタメとかリズムとかをスペイン風にやりたかったのですが、それよりもソロが無事に通り抜けてくれることを祈るような気持ちで指揮していました。
管楽器のソロよかったですが、表現の幅が小さかったのと、音量が小さかったですね。これは逆の視点から言えば弦楽器の音が多いんですね。人数が多くてももっともっと小さな音を出さないとうちの楽団の演奏はよくなっていかないと感じています。
モーツアルトの25番はいままで当楽団に取って鬼門だったモーツアルトをようやく克服できた演奏でした。本来の25番のもつ疾風怒濤感はテンポとしては出せませんでした(あんな遅い25番聞いたらモーツアルトに叱られますね)。しかし、ドイツ・オーストリアの正統的なクラシック音楽という意味ではモーツアルトらしさに少しだけ光がさしたと思っています(うちの楽団にしては、ですが)。
私自身モーツアルトに苦手意識があったのですが、何となく仮免許を取れたような気がします。
メインのドボルジャークの新世界よりは、実は私のオーケストラデビュー曲で4楽章だけでしたが、1stトロンボーンを吹いて初めてオーケストラで演奏した思い出の曲です。
超がつくほどの有名曲ですが、私はとにかくどんな場合にも楽譜に忠実に、お作法があって作曲者が書かなかったとしたら、それを何故書かなかったのか、考えてから演奏するようにしています。
例えばこの9番は1楽章静かに始まり、ホルンのffの強奏のあと、3拍をつまんでいる演奏が多いです。その後の弦と管の強奏の後は、殆どの演奏でテンポが上がります。何故上がるんでしょう?私の尊敬するクーベリックも、凄い好演を残しているアンチェルももの凄くテンポが上がります。でもそんなこと楽譜には書いていません。
私は楽譜に書いてある通り、拍を守り、テンポを守りました。結論として、私は自分の演奏が正しいと今でも思っています(チェコの音楽を知らないからかもしれませんが)。
この新世界よりは、トータルで私の思う通りのいい演奏が出来たと思います。油断したもんだから4楽章の最後でバラバラになりかけて冷や汗をかきましたが、どの楽章も個性的ないい演奏が出来たと思います。今後人数が増えて、もっともっと練習して音程がもっとよくなると演奏が楽しくなるでしょうね。
さて、私は今回全部の曲を暗譜で振りました。暗譜が大変だという自慢話をしたい訳ではなく、暗譜をすることで音楽を楽しめるというのが、再認識できました。暗譜していれば当然、視線は常に奏者にあります。いつもよりも視野が広く、オーケストラ全体をコントロールすることが出来ました(楽員はなかなかこちらを見てくれませんが)。
指揮者としてはまだまだ反省点の方が多く、これからの課題もはっきり見えて来た演奏でしたが、今までのように演奏前に運営のことで患わされることもなく(この点は楽員とスタッフに感謝)音楽に集中できました。
また、680名の来場者はうちの楽団の新記録です。冒頭にも書いたように、うちの楽団は楽員だけが自己満足で音楽をすることは目指していません。定期演奏会に足を運んでくれる、多くのお客様があっての文京フィルハーモニック管弦楽だと思っています。
今後、楽員が音楽に集中できるように、来てくれたお客様にもっともっと喜んでもらえるように、色々考えて行こうと思っています。
来てくれたお客様、本当にありがとうございました。ぜひ再びのご来場を楽員一同心よりお待ちしています。
スタッフの皆さん、本当にありがとうございました。皆さんのおかげでこんなに大きな演奏会が、無事故で(私が知る限り)行えました。
そして楽員の皆さん。演奏ははっきり言って下手くそです。でも一生懸命練習した結果は出せたと思います。音楽に終わりはありません。また、1からコツコツと仲間たちと音楽を作っていく作業を楽しみましょう。