私はお金がないこともあって、あまりプロの演奏会には行きません。お金を払ってまで聴くとなるとわずかなミスも許せませんし、そもそもお金を払ってまで聴きたい指揮者というのがあまりいないからです。
ゲルギエフ、スクロヴァチェフスキ、ファビオ・ルイージ、この前知ったエリシュカ。エサ=ペッカ・サロネン、ジュルジュ・プレートル、アルミンク、そしてハーディングぐらいでしょうか。
まぁ、サヴァリッシュ先生がもしも振るのなら、地球上のどこであっても行きたいとは思いますが、恐らくもう再び舞台でお目にかかることはないでしょう。
そんな中、ハーディングがベートーヴェンの交響曲3番エロイカを振ると知った時は一も二もなくチケットをお願いしていました。
実は私はエロイカというのはベートーヴェンの9曲の交響曲の中で下の方のランクだったのですが、昨年の第2回定期演奏会で取り組んでからすっかり好きになってしまい、今では7番を抜いて1番好きと言ってもいいと思います(但し、このランキングはしょっちゅう変わる)。
場所もサントリーホールで、改装してから一度も行っていなかったので今回の演奏にはとても期待していました。
そして、ハーディングの指揮はその期待に違わぬ素晴らしい指揮でした。前プロのシュトラウスの死と変容とは打って変わって、12型、管楽器はシングルのごく小さな編成、トランペットはロータリー、ティンパニもバロックティンパニ。弦楽器はノンヴィブラートのピリオド奏法でした。
結果、非常にコンパクトで締まった演奏でありながら、ハーディングの強弱、緩急自在の指揮に新日本フィルが必死に食らいついていた演奏でした。
正直に書くと、新日本フィルの演奏は、ハーディングに対して遠慮がある様な、曲想が飲み込めていない様な、どこか落ち着かない演奏でしたし、とにかくフルートが下手くそだったりと、お金を払って聴きに行った私としては満足のいく演奏ではありませんでした。
しかし、それを補って余りあるハーディングの指揮で、私は非常に大きな勉強をさせてもらいました。
ハーディングははっきりと自分のやりたいことを主張し、オーケストラを完全にリードしていました。最近流行の「オーケストラと音楽を作る」というよりは「俺の音楽についてこい」という指揮法で、尚かつ指揮が明快なため、奏者は非常に演奏がしやすかったのではないでしょうか。
また、演奏に傷だらけだったオケですが、乱れた時にお互いを聴き合って瞬時に修復するのは流石にプロの演奏です。これもいい勉強になりました。
うちのオーケストラでも、練習でもっとオケ内を聴く様な練習をこれからやっていきます(その為のアイデアも閃きました)。またステージの上では私がもっともっとやらなくてはいけないことがあるということにも気づかされました。
色々書きましたが、価値のあるいい演奏会でした。
About NO Masaharu
元々トロンボーン吹きですが、棒振りです。好きな作曲家はベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ブルックナーです。 ビールと餃子とカレーが大好きです。